理事長のひとりごと

エンパワーメント・アプローチ PartⅡ

2017.10.27

 エンパワーメントは、本来、広辞苑等によれば「権利、権限」とされるが、社会福祉、教育、保健・医療等の広い分野で取り上げられている。ソロモンが、1976年の著書でこの概念を最初に導入したことは、皆さんはよくご存じでしょう。
 エンパワーメント・アプローチは、社会福祉士の視点で見ると「社会的な弱者、差別や搾取を受け、自らをコントロールしていく力を奪われた人が、本来に持っている力を取り戻していく過程」となります。しかし、精神疾患を患った人は、無力感や自信喪失感を抱くようになり、パワーレスな状態に陥ってしまう危険性がある。
 我々は、精神障がい者施設を運営している一員であるから精神保健福祉士(PSW)の職員の皆さんに、「ひとりごと」として、「桃山学院大学社会学部の栄セツコ」先生の文献を参考にさせていただいて、敢えて、パートⅡをつぶやきました。
 精神保健福祉士(PSW)は、クライエントを「精神障がい者」としてでなく、一人の生活者と位置づけ、「疾病や障がいはあるが、その他に個性豊かな能力がある。たとえ、重症な精神障がいがあっても、人は学び、成長し、変化する可能性がある」という信念を持ち、精神障がい者の病理の軽減や欠陥の克服だけでなく、生来的に秘めている才能や能力及び生活経験から得られた知恵などのストレングスに着目し、活用・強化出来るような環境に改善して欲しい。精神障がい者の場合は、思春期や青年期に発症することが多いため、生活者としての生活体験を取り戻すために、自分で選択したことの小さな成功の積み重ねによって、新たな決意が生まれ、色々なことを実行する動機が高まるような経験を蓄積できるように支援して欲しい。
 精神保健福祉士(PSW)は、経験年数を重ねる中で、自からがスーパービジョンを受ける機会が増え、自己理解や自己覚知が促進することが考えられる。近年、精神病院の在院期間の短期化や外来患者の増大で、PSWの職務分業化により、援助の断片化が生じており、臨床の場で実践することが困難状況にあることが考えられると、栄セツコ先生は結論づけられています。